2012年9月19日
読書の悦楽
今世紀前半の、フランスの名ピアニストのアルフレッド・コルトーについて書かれたこの本、ずっと絶版だった為、随分前に、上野の音楽図書館で閲覧して内容を貪った記憶があります。
白水社から、没後50年の記念復刊で、また手にすることが出来るとは、幸せなことです。
以前読んだ時は、コルトーが創始者であるエコール・ノルマルでの、「レッスンの注意点」や「生徒の練習について」列挙されている箇所を、興味深く読みました。
再び手に取った今は、コルトーの勤勉さや、知識人の義父や妻との背景、政治的な関心を持つ傾向など、他に目が行きました。
しかしなんといっても、この種の読書の愉しみは、開いたら、別の(過去の)時代の知り得なかった情報と、対話出来る事にあります。
その辺り、音楽に大変良く似ています。
遥か雲の上の偉大な人物に、時を経て、僅かでもふれあうことの出来る喜び。
音楽ならば、大作曲家の想いに共感したり、啓蒙されることが出来ます。
本を開けば、古き美しき良き時代の音楽界で活躍する、コルトーの経験を垣間見れる。
そういった、音楽と、読書の共通性を感じながら、虫の声を聞き、本を開く悦びを感じた秋の入り口でした。
「アルフレッド・コルトー」 ベルナール・ガヴォティ著 遠山一行・徳田陽彦訳(白水社)
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