「菩提樹」

シューベルトの歌曲「冬の旅」の5曲目、「菩提樹」。

菩提樹の葉が、風に揺れてざわめく美しい前奏で始まるこの曲。

「私の音楽には、悲しみ(涙)しか無い。」と述べていたシューベルトの特徴は、この曲にも表れています。

私は、この曲を数年前に伴奏した本番中、演奏の難所を越えた辺りで、急に緊張感が解け、心癒される曲調に、胸が詰まって涙が出そうになったことがあります。

そんな演奏中の経験は、後にも先にもそれきりですが。

丁度その時期は、苦しみを乗り越えている途中、渦中は過ぎたかといった時期でした。演奏中に、その涙が湧きそうになった瞬間に味わった思いとは、「生きていて良かった。」でした。

「冬の旅」は、絶望と孤独を歌っているのに、そしてそれは、シューベルト自身の思いでもあるのに、人を癒す力があるのですから、シューベルトは凄いですね。

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Filed under: 音楽,音楽史 — 11:59 PM
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2 Comments »
  1. 敦子先生
    孤独と絶望の中に居ればこそ、希望の光は一際明るく暖かく感じられるものなのかもしれませんね。
    私も私が悲しませてしまった大切な人に「生きていて良かった」と日々感じられる毎日を送ってもらえればと願っています。

    コメント by 久住 — 2012年2月12日 6:56 AM
  2. みやこちゃん、コメント有難うございます。私が、9月に書いたブログに「中秋の名月」というのがあるのですが、住む所と仕事を無くした被災者の事を書きながらも、当時私はとても幸せを感じていました。だからこそ、ああいう記事が書けたのだと思います。「生きていて良かった」は、その一週間前にも強烈に思いましたし、その後、美しい秋の自然を眺めながらも、星を仰ぎお湯に浸かりながらも、いつも感じました。過ぎ去った事への感謝も、心の拠り所にもなりうるものだと、最近は思います。

    コメント by あつこ — 2012年2月12日 1:02 PM
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