ツィメルマンのリサイタル
昨夜は、サントリーホールに、クリスチャン・ツィメルマンを聴きに行って来ました。
シューベルトが亡くなる3ケ月前に作曲した、3つの偉大なソナタの内、2曲。
イ長調のD959と変ロ長調D960でした。
2曲とも超越的ながら、対照的とも言えるこの作品。
イ長調は、最後の生命の力を振り絞り、勇気を持って死に立ち向かうかのような力強さがあります。
2楽章では、一転、孤独なさすらい人の嘆きと叫びがあります。
変ロ長調のソナタは、深い情緒をたたえ、心を奪われる旋律の美しさは、一度耳にしたら忘れられぬ、最高傑作です。
この1楽章は、シューベルトが日記に残した、「愛を歌うと苦しみになり、苦しみを歌うと愛に変わる」ということば、そのもののように思います。
どちらも「天国的に長い」です。
ある評論家の説ですが、シューベルトの器楽曲がどこまでも長いのは、シューベルトにとっては、歌が・音楽が「終わらないこと」が大事なのであり、短命の運命に抗って、いつまでも続くことを願っていると読んだことがあります。
ツィメルマンの、変ロ長調ソナタの演奏は、非常に、巧みに練れており、どこまでも自然に表現され、叙情的な歌い方は、まさに本領発揮といった感がありました。
殆どの聴衆は、この曲の演奏がお目当てだったはず!
玉虫色に微妙なあやを魅せ移り変わる転調は、どこまでも美しく、シューベルトの魂が乗り移ったかのようで、音楽にぴったり付いていくように、ハートを奪われ聴いていました。
ステージ横の、ピアノの音が立ち昇る席から、背中からの動きや、手の動きが良く観えました。
アンコールでは、シマノフスキの前奏曲を一曲。
良かった…この長大なソナタの後、即興曲や楽興の時などが来たら、せっかくの興が・・・
最後に、シューベルト自身の言葉を。
「音楽とは、みんな悲しいものだ。
楽しい音楽なんてあるだろうか。」
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