孤独の代償〜グレン・グールドの映画より

映画「グレン・グールド天才ピアニストの愛と孤独」を観ましたmovie.gif

先駆けて、青柳いづみこさんの「グレン・グールドー未来のピアニスト」を読んだのですが、そこにこんな事が書かれていました。「ピアニストにも様々なカテゴリーがある。国際的なキャリアを積む人、限定された地域で活躍する人、教育で生活費を稼ぎながら自主的な活動を行う人、しかし、いかなる国籍のいかなる年代のいかなるレヴェルのアーティストも、ステージ直前に過酷なプレッシャーに襲われるという点ではまったく平等なのだ」。「すべてのことが不安になり、最悪の状態を予測し、リハーサルで不出来だったところが気になり、リハーサルで完璧に弾けたら弾けたで、かえって本番で間違えるのではないかという恐怖に襲われる。」coldsweats02.gif

数多くのグールド論が出版されている中、彼がコンサートをドロップアウトした理由を、同業者としての立場から理解されたからこそ、青柳氏は、研究の範疇外であったグールド論を執筆なさった様ですbook.gif

ドキュメンタリーの映画の方では、伝説化されたグールドではなく、意外にも女性関係にも言及され、インタビューを通して、プライベートにも焦点があてられました。グールドと愛情関係にあった画家の女性とその子供さんのコメントがkaraoke.gif、この映画の見所の一つでしょう。家庭的な暖かさを味わったその時期の、安定していた演奏も、聴いてみたいです。

コンサート活動を辞めてしまってからは、ラジオや、レコード制作に力を注ぐこととなりますが、1955年からのレコード業界の急成長が、更に、その事情に勢いを注ぐ要因となった様ですね。まさに先見の明があった様です。マフラーに手袋をした演奏姿などは、レコード会社の戦略としても多分にあった様です。

デビュー版「バッハ:ゴルトベルグ変奏曲」を始めとし、数々の名盤を生み出した背景には、彼の独特な個性から来る生活様式があった訳ですが、孤独の代償として、後世に残した功績は計り知れないでしょうsign01.gif

ステージ活動を辞める一因ともなった、バーンスタインとのブラームスの共演での酷評や(素敵な演奏なのに…)、「競争を好まないけれどオリジナリティによっての一番を好む」一種矛盾した特徴など(一人っ子らしい…)、この映画と、青柳氏の本を併せて、グールドを知る機会となりました。

曲によって、大変遅く弾く解釈の時もあるグールドですが(遠縁に当たるグリーグのソナタなど、あまりにも遅い…)、演奏技術は卓越し、どんな曲でも、あまり練習なしで難なく弾けるピアニストであったといいます。

映画の中で、一番心に残った言葉は、たしかこんな言葉でした。

「芸術家もまた、普通の人間なのだ」

映画の最初とラストで、航空から映し出された、美しいカナダの紅葉maple.gif。。

昨年のメープル街道の旅では、オンタリオ州へは行きませんでしたが、いつかもし行く事があったら、トロントに行ってみたくもなりました。

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Filed under: アート,ピアニスト, — 12:02 PM
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4 Comments »
  1. 心に響く素敵なご感想、ありがとうございます。
    「孤独の代償」や
    「、競争を好まないけれどオリジナリティによっての一番を好む」など
    人間の奥深さが感じられて、ビシビシきました。

    コメント by ヤヨイ — 2011年11月29日 12:40 PM
  2. ヤヨイ先生♪、コメントを有難うございます!

    「孤独の代償」は、映画を観終わった直後、最初に感じた、グールドの人生と功績に対する私の感想でした(*^^*)
    「よしっ、ブログのタイトルにするぞ!」と思った程です(^^:)
    「競争を好まないけれど、…」の考察は、青柳氏の本から来ています。
    グールドと愛情関係にあった女性やその子供さん達のコメントが、見所の映画でした。(←本文に追加させて頂きました。)

    コメント by あつこ — 2011年11月29日 12:46 PM
  3. ペルル先生、こんにちは。私もグレングールドのドキュメンタリー映画、観ました!!ジーンと胸にきました。

    ピアニストも普通の生活、普通の幸せを求めますよね、そして社会的な色々なしがらみの中、自分の音楽を貫いていくのは本当に容易なことではないと想像できます。

    グールドの一途な思いがあってこそ、音色や解釈に反映されて、私たちは心から彼の音楽に魅せられるのでしょうね。

    ちょっと重めの映画でしたから、私は普通の街のピアノ教師で良かった~なんて思いました♪

    コメント by めるも — 2011年11月29日 1:41 PM
  4. めるも先生!初コメント有難うございます(*^^*)
    嬉しく拝見しながらも、今日はなかなかPCを開けず、ご返信が遅くなってすみません♪

    先生もご覧になったのですね!
    めるも先生のコメントから、とっても共感した点など、同じだったことが嬉しいです^^
    ピアニストも、普通の幸せを求めますよね…。
    あの女性の事だけでなく、グールドは、晩年、ファンからの「貴方のピアノの音に勇気付けられました。」という言葉に素直に喜んでいたというエピソードからも、素直な普通の面を垣間みれて安心すらしてしまいました。
    完璧なまでに芸術至上主義を貫いて、そこまでして到達したものを、後世の我々は、CD で享受出来るって、素晴らしい遺産ですよね。

    けれども、ラストに従って、観ているのが辛くなりましたね。。
    本当に…、私も普通の街のピアノ教師で良かった(*^^*)!

    (めるも先生は、代表とかされていらっしゃるし、ちょっと違いますよ〜^^♪!うふ)

    コメント by あつこ — 2011年11月29日 11:21 PM
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