中畑淳先生のコンサート

23日、福島大学の准教授の中畑淳先生のコンサートがありました。
プログラム前半は、ベートーヴェンのソナタ「悲愴」と「熱情」でした。
後半は、珠玉の小品を5曲と、ショパンのバルカローレ(舟歌)で、アンコールも、楽興の時や子犬のワルツ、月の光と、盛り沢山でした。

柔らかな音色、豊かなハーモニーの色彩感、内側から溢れる出る音楽性、そして、ショパンのビロードの様な美しいレガートに魅了された2時間でした。
古典派では、抑制された中に、均整のとれた音の粒が、確かな構成力で端正に際立っていました。

「悲愴」は、1楽章はハ短調で、文字通り重々しく始まりますが、ベートーヴェンの場合は、何かしら、「駆り立てている」様なフレーズがありますね。2楽章は、「のだめ」でも有名になった、美しい中声部のカンタービレですが、これは、本当に聴いているのと弾くのは大違いの、案外弾きづらい曲ですよね。
調性は、変イ長調。幸せの調で書かれています。
これは、以前、故・園田高弘氏が、サントリーホールで70歳のお誕生日に開かれたリサイタルでのアンコールで、観客から受け取られた深紅のバラを、ピアノの右脇に差して演奏された光景を思い出します。

「悲愴」から「熱情」が作曲される間には、6年位の年月の経過があります。中期の傑作「熱情」は、ほとばしる様なファンタジーに溢れた音楽だなと再認識しながら聴きました。やはり、ベートーヴェンというのは、作品に、その人となりの成熟度合いが如実に表れている作曲家であると思います。

ベートーヴェンをお聴きしながら、中畑先生は、シューベルトもきっと合われるだろうと思っておりましたら、後半の即興曲op90−2は、やはり、転調が玉虫色に、燻した様な得も言えぬ絶妙さをみせた素晴らしい演奏でした。
後半は、一番前の席の中央が空いたので、移った所、よりダイレクトに伝わって来て(指も見えて)、とても感動しました。私、音楽に感動すると、心臓が飛び出そうな心持ちになるんですよね!

後半第一曲、バッハの「主よ人の望みの喜びよ」は、教会の響きで、立体的な遠近感のある演奏でした。
モーツアルトのトルコ行進曲では、「遊び」があり、トロイメライも、愛の夢も、息の深い、聴き応えたっぷりの、豊穣な演奏だったんです。

ショパンの舟歌に至っては、これはもう、レガートがあまりにも美しく、中間のスフォガートの部分など、本当にはっとしました。
テーマの、舟が漕ぎ出て、デュエットで歌われる開始の入り方なども絶妙で、勉強になりました。
コーダに近い場面で、大変難しい所があるのですが、会場でお会いした先輩曰く、「そこは、(難儀に弾くのではなく)香水をふりかける様に、、。」と、中畑先生が仰っていらしたとの事。
大変な部分を、仰々しく感じさせない…というのは、演奏の上で大切なことですね。

この所、海外の演奏家は、これまでより来日を控えているし、最近、あまりクラシックの演奏会に行っていなかった事にも気付き、改めて、クラシックの演奏会の内容の濃さに、大変充実した時間でした。

とても穏やかな、思わず微笑みたくなる様な、楽興の時…というのは、こういう瞬間なのでしょう。

いらしている子供さん達が、とても静かに聴き入っていたのも印象的でした。

にほんブログ村 クラシックブログ ピアノ教室・ピアノ講師へ
にほんブログ村

Filed under: ピアニスト,リサイタル — 11:55 PM
トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメントはまだありません »

No comments yet.

Leave a comment





(一部のHTMLタグを使うことができます。)
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

CAPTCHA